旅アドベンチャー『風雨来記4』開発秘話

2021年7月8日(木)に発売を予定している『風雨来記4』は、日本一ソフトウェアが制作を手掛ける「旅」をテーマにしたアドベンチャー。
しかし、『風雨来記3』までのシリーズタイトルを制作したのは株式会社フォグ。
創業者である宗清紀之氏が亡くなられた後、FOGブランドの事業は日本一ソフトウェアが継承している。
シリーズ続編を制作した経緯を、日本一ソフトウェア代表取締役社長新川宗平にインタビューいたしました。

株式会社日本一ソフトウェア 代表取締役社長 新川宗平

日本一ソフトウェアとFOGとの関係について教えてください

日本一ソフトウェアとFOGの関係は、それぞれの創業前にさかのぼると聞いています。
FOG創業者の宗清紀之さんと日本一ソフトウェア創業者の北角浩一は、ゲーム業界の営業仲間でした。もともと宗清さんはナムコの営業、北角はサン電子の営業でした。
営業マン同士で情報交換や飲み会をする仲だったそうです。
その後、宗清さんはアイマックスに転職され、北角は一足先に独立して有限会社プリズムを設立しました。
当時のプリズムは10人程度の小さな会社で、アイマックスにいた宗清さんからお仕事をいただき、『デュアルオーブ』(1993年4月)や北角が新たに設立した日本一ソフトウェアで『花札グラフィティー 恋々物語』(1996年5月)などを開発しました。
その後、宗清さんも独立。FOGを設立されました。
FOGの第1弾タイトルとなる『美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語』(1997年8月)も日本一ソフトウェアが開発を担当しました。
宗清さんは日本一ソフトウェアにとって創業時の苦しい時期を支えてくださった恩人のお一人だと思っています。

宗清社長と新川社長とのエピソードを教えてください

私が日本一ソフトウェアに入社したのは、1996年4月。ちょうど宗清さんがFOGを設立された年です。
私は営業として入社しましたが、開発志望だったので隙あらば開発のお手伝いをしていました。『美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語』(以下、『みちのく』)では取材や企画資料作りのお手伝いをさせてもらいました。
『みちのく』は花札+写真撮影+美少女というゲームで、私は『風雨来記』の原点にあたるゲームだと位置づけています。
『みちのく』で初めて宗清さんとお会いしたのですが、第一印象は「怖い」でした。(笑)
まず見た目が怖い。
言いたいことをズバズバ言う。しかもコテコテの関西弁で。
最初は「やべーな、この人」と思っていましたが、一緒に仕事をしていく中で、いろいろ教えてくださるんですよね。アカンもんはアカン、エエもんはエエ。ブレない芯があったのでしょうね。すごく明確でした。
仕事にはとても厳しい人でしたが、一方で情に厚い人でした。よく食事や飲み会にも連れていっていただきました。当時の私にとって身近な営業の先輩は北角しかいなかったので、異なるタイプの宗清さんからも教えを受けられたのは、とてもありがたいことでした。

『久遠の絆』(1998年12月)も日本一ソフトウェアが開発を担当しました。
ノベル型アドベンチャーゲームとしては異例の大ヒットとなり、FOGの代表作となりました。

そのとき私は『マール王国の人形姫』(1998年12月)の開発をしていたのですが、販売本数でもファミ通クロスレビューの点数でも負けて、非常に悔しかった覚えがあります。
冷静に考えれば、それがお客様の評価なわけですから真摯に受け止めればいいのですが、なぜか宗清さんのドヤ顔が目に浮かぶようで猛烈に悔しかったです。

その後、会社同士のお付き合いとしては少し冷却期間を挟みます。
『久遠の絆』のヒットを受けて同作は他のハードでの移植が進んでいくのですが、当時の日本一ソフトウェアは社員数が少ないため自社タイトルの開発で手一杯になり、また移植技術も不足しており、お仕事をご一緒できませんでした。不義理をしてしまったと思っています。

久しぶりにFOGさんと本格的にお仕事を再開したのは『雨格子の館』(2007年3月)でした。
このタイミングで『みちのく』『久遠の絆』から座組みが変わり、FOGが開発を担当し、日本一ソフトウェアが発売するというタッグの組み方になりました。
以降、『奈落の城』『夢想灯篭』『氷の墓標』『ミッシングパーツ』『風雨来記3』などのタイトルで一緒にお仕事させていただきました。

『風雨来記3』(2015年2月)の開発が終わった後、宗清さんが岐阜にお越しになり、一緒に飲みに行きました。「最近、腰のあたりが痛いんやわー」としきりにおっしゃっていたのを覚えています。『風雨来記3』も決して楽な開発ではなく、宗清さん自ら最前線で指揮を執っておられたので、そのときは宗清さんも歳を重ねられて、少しお疲れなのかな?ぐらいに思い、「健康診断に行ったほうがいいですよー」とオススメしました。

2015年5月、池袋にあった子会社エンターテインメントサポートの事業がなかなかうまくいかずに苦労していたところ、宗清さんにヘルプをお願いすることにしました。おかげで滞っていた業務も随分と整理されました。その頃、宗清さんの体調は相変わらず良くないようでした。
今後も子会社のヘルプをお願いするにあたり、一度ちゃんと健康診断を受けていただいたほうがいいと思い、今度は強めにお願いをしました。
それからすぐのことでした。
夜に宗清さんから電話がかかってきたので何かな?と思ったら「健康診断したらガンが見つかった」という連絡でした。最初は言葉になりませんでした。自分が差し出がましく健康診断をオススメしたために、こんな結果になってしまったと思い、お詫びしました。
宗清さんは自分の不摂生が祟ったのだから気にしなくていいとおっしゃいましたが、今でも余計なことをしてしまったのではないかと後悔しています。そのまま気づかずに手術もしなかったほうが長く生きられたのではないかと悔やんでいます。

最後に宗清さんとお話をしたのは、亡くなる一週間前のことでした。
昼過ぎに宗清さんから電話がかかってきました。
「そろそろ復帰できそうやー! またよろしく頼むなー!」
と、すごく元気そうな声でした。5分程度の会話でしたが、終始いつも通りの元気な関西弁で嬉しそうにお話されていたので、無事に回復されたことを喜びました。
しかし、その一週間後に容体が急変し、お亡くなりになられたのです。
2016年2月のことでした。

FOGの事業継承に至った経緯を教えてください

これまでお話したような経緯や宗清さんから依頼もあり、またご遺族と相談した上で日本一ソフトウェアがFOGを継承することになりました。私個人としてもFOGは宗清さんが生きた証の一つであり、このままFOGを消滅させたくないという想いもありました。
そして、2016年7月。FOGは日本一ソフトウェアの子会社となりました。

他のアドベンチャーゲームを作る選択肢もあったかと思いますが、『風雨来記4』開発判断をした際、どのような思いでしたか?

宗清さんからFOGを受け継いだ以上、FOGブランドのタイトルを世に出したいという気持ちは常に心のどこかにありました。
しかし、どのタイトルを開発すべきかということと、そもそもFOGタイトルを開発できるスタッフを集められずに、すぐには実現しませんでした。

2019年に縁あって『風雨来記』シリーズに関わってきた椎名が日本一ソフトウェアに入社し、これをきっかけに『風雨来記4』の検討が始まりました。
※椎名建矢 『風雨来記3』『風雨来記4』の制作を手掛けた元FOGのディレクター
※『風雨来記』シリーズ
 2021年に20周年を迎えた、日本各地のスポットを旅するアドベンチャーゲーム

椎名には「やるなら題材は岐阜がいい」と伝えました。岐阜を題材にすれば取材もしやすく、地元・岐阜を全国の皆さんにもっと知っていただくきっかけになると思ったからです。
私が関わったのはそれぐらいで、あとは椎名と開発スタッフが久しぶりのFOGブランドタイトルということで熱い想いをもって開発してくれました。

新川社長にとっての『風雨来記』はどのようなタイトルですか?

『風雨来記』シリーズは、不思議なゲームだと思っています。
バイクで旅をする。言ってしまえば、それだけのゲームです。
しかし、旅をする土地には私たちの知らない場所や歴史、人との出会いがあるわけです。
テレビの前にいながらも、実際に旅する気分が味わえる。実に不思議な体験を提供してくれるゲームです。
宗清さんは『風雨来記』シリーズを通して、その土地の自然や歴史、人の素晴らしさを伝えたかったのかな、と今更ながら想いを馳せています。

『風雨来記3』には実写動画のシーンが一部ありました。
当時はゲームの容量等の問題でほんの一部しか実写動画にできませんでしたが、旅の雰囲気を味わうのに抜群の効果を出してくれていました。
『風雨来記4』ではバイクでの移動シーンすべてが実写動画になりました。
しかも360度カメラで撮影しているので、あらゆる角度から風景を楽しむことができます。
ようやく技術と時代が追いついた。そんな気がしています。
宗清さんに、この『風雨来記』をお見せしたかったです。

『風雨来記4』を楽しみにしているお客様へのコメントをお願いします

今、コロナ禍の影響により世界中で苦しい日々が続いています。
海外旅行はもちろん、日本国内の旅行も満足にできない状況です。
『風雨来記4』の開発をスタートしたときには、まさかこんな時代になるとは夢にも思いませんでした。
多くの方が楽しみにしていた旅行をあきらめて、悲しい思いをされていることでしょう。
そんなときに『風雨来記4』で少しでも旅気分を味わっていただけると嬉しいです。
こんな時代だからこそ、世の中のお役に立てるゲームだと思います。

岐阜には、たくさんの観光スポット、歴史、名物がぎっしりと詰まっています。
ガイドブックを片手に『風雨来記4』を遊んでいただくのもいいでしょう。
岐阜名物の飛騨牛や鮎、鶏ちゃん焼きなどを通販でお取り寄せして食べながら『風雨来記4』を楽しんでいただくのもいいでしょう。
皆さん、それぞれの楽しみ方で岐阜の旅を満喫してください。
そして、コロナ禍が終わったあかつきには、ぜひ実際に岐阜に遊びに来て、観光スポットを巡り、岐阜名物を召し上がってください。皆様のお越しをお待ちしております。

タイトル

風雨来記4

ジャンル

旅アドベンチャー

発売日

2021年7月8日

対応機種

PlayStation®4、
Nintendo Switch™

価格

パッケージ版/ダウンロード版
6,980円(税込7,678円)

CERO