乱暴に一言で表現すれば〝旅に出たくなるゲーム〟を目指して作られています。
とはいえ「遊ぶもの」として成立しなければなりませんので、基本的な流れとしては
①行ってみたいスポットへツーリングして、
②訪ね回ることでネタを入手して、
③記事を作ってランキング上位を目指す。
という感じです。
これまでシリーズ3作品(+開発中の4)、舞台やシステムにそれぞれ多少の差異こそありますが、根幹は〝旅に出たくなるゲーム〟を目指す、そのことに変わりはありません。
テレビの旅番組とかブラタ○リとか、とても面白いですよね。自分も大好きです。
ただ、あれはどうしても画面を観るだけ・受け取るだけの一方通行。
風雨来記というゲームは、ユーザーの「やってみたい」を能動的に介在させる双方向性によって、より「ああ自分は旅をしているぞ」という疑似的な実感・体験をしていただいて、ゆくゆくは「旅をしてみたい」と思っていただける——そんなタイトルです。
もともとFOGタイトルをいくつかお手伝いしていたのですが、ある日スカ社長(故・宗清紀之FOG前社長)から何の前触れもなく「3作って」と話を振られたのが直接のきっかけです。
実は、自分は風雨来記(初代)の影響を受けて北海道へ足しげく旅するようになった人間ですので、その経緯まで含めて、スカ社長から白羽の矢が立った部分なのかなと思います。
これまで風雨来記シリーズは伝統的(?)に250ccのバイクが使われてきました。初代と2はホンダ・ゼルビス、3はカワサキ・ニンジャ250Rです(2はちょっと特殊だけど)。
風雨来記シリーズには自前のバイクが多く出てきます。今回も実は自前のバイクを使おうかなぁと構想当初は思うこともありました。でも、自分の愛車ってヤマハ・FZR250R(バッリバリのレーサータイプ・しかも今や旧車の部類)なんですよ。長距離長期間のツーリング取材はだいぶ厳しい。だから3のときもニンジャになったわけですが……。
で、今回新作を開発するにあたって、より多くの人に風雨来記という存在を知っていただければ——と思って、タイアップのご相談をヤマハ発動機さんに持っていきました。色々なメーカーがある中でなぜヤマハかというと、自分がずーっとFZRに乗ってきて愛着のあるところだったから……というとてもシンプルな理由です(※)
磐田にある本社へお伺いしてゲームの内容と発売予定時期をお伝えしたところ、OKどころか「じゃあせっかくなんで一番いいやつどうですか」と。なんとTHE KING OF
MT・MT-10が出てきちゃいました。しかも豪華装備マシマシのSP版ですよ。
自分は250ccくらいの何かを軽くお借りできればいいかな~と思っていたのが、まさかのハイクラスリッターバイクを乗り回すことになるという結果に。正直なところ、内心「なんかヤベェことになっちまったな」と思ってました。
山奥の林道とか大丈夫かな……など心配もあったものの、蓋を開けてみればギュインギュインと乗り込んでいけたので、MT-10はいかつい図体しながらフレンドリーなバイクだと感じましたね。とにかく事故なく終えられてよかったです。
※じゃあなんで3のときニンジャ乗ってたんだよ、という突っ込みが来ると思うんですが……当時250ccクラスのスポーツツアラーってすごく不遇というか谷間の時期でして、ニンジャか単気筒CBRしかなかったんです。今でこそ四大バイクメーカーからいっぱい出てますしヤマハ・YZF-R25も息の長いモデルとして活躍していますが、3の開発当時にはまだ発表の雰囲気すらありませんでした。
とにもかくにも、ツーリング中の様子が動画化されたことですね。これまでは機材の問題とかゲーム機の性能の制約とかがあったので、道の写真を拡大するという手法で、走るさまを疑似的に表現していました。今回、ようやく時代がやりたいことに追いついて、晴れて映像化することが叶ったわけです。
もう一つは、視界が360度に拡がったこと。旅あるいは旅行には、周りに広がる景色を味わいながらドライブしたり探訪したりする楽しさがあります。でも、普通の写真や映像だと固定された一方向しか見ることができない。これって旅をする上でとてももったいないんです。(だからこそ初代や3のツーリングには「わき見」用の写真が用意されている地点もありました)
本当はこれは3のときにやりたかったことだったんですが、技術的な限界で断念した経緯があります。今回ついに実現することができました。
これらの進化したポイントで、「まるでその場にいるかのような感覚」をより強く楽しんでいただけるようになったと思います。
風雨来記は、間違いなく自分の人生を変えたゲームです。
自らの目で見える範囲の景色しか知らなかった少年に、こんな場所があるんだぞと——プレイステーションという、今から思えばとてつもなく制限のあるスペックででも、生々しく外の世界を見せつけたのです。
北海道の魅力を教えてくれたのは風雨来記でした。
キャンプツーリングに目覚めさせてくれたのも風雨来記でした。
一期一会の輝きと寂しさそして尊さを伝えてくれたのも風雨来記でした。
なによりも、旅することの楽しさを味わわせてくれたのが、風雨来記でした。
その〝旅ゲー〟の系譜は、絶やしてはなりません。
風雨来記20周年、大変めでたいことです。
初代を遊んでいた当時は、自分がこんなメッセージを出すことになるなんて思いもしていませんでしたが……それはすべて、20年も前に完成度の高い「旅」を提供してくれた初代風雨来記があったからこそですし、さらには風雨来記を遊び、風雨来記を愛し、風雨来記を支えてくださった多くのユーザーさんあってのことです。
FOGはこれまで「みちのく秘湯恋物語」を始め、旅ゲーの金字塔を打ち立ててきました。
それらの生みの親のひとりであるスカ社長は、風雨来記を息の長いシリーズにしたいと常々言っていました。その遺志を継いで、これからも〝旅に出たくなるゲーム〟を作り続けていきたいですね。
さて風雨来記4は、舞台がなんと岐阜です。
なぜ岐阜なのか?——という点には、例えば「日本一ソフトウェアの本社が岐阜にあるから」とか色々な要素が絡むのですが、まず第一に、岐阜って面白いところがたくさんある! ということです。
自分はもともと東京の人間でした。
東京にいた頃は、岐阜(特に美濃)のことなんてほとんど知らないし特にイメージも浮かばない。せいぜい白川郷と高山と飛騨牛くらいなもので、下手すれば「岐阜ってどこだっけ?」と地図を引っ張り出す始末です。
ところが仕事の関係で岐阜へ引っ越してきてみれば、「なんだよ岐阜ってこんなに面白いことがいっぱいある場所なのかよ! 全然知らなかったよ!」と日々新しい発見にワクワクしました。
たしかに、初代から3までの舞台である北海道や沖縄と比べれば、岐阜の印象は地味です。ネームバリューや有名な場所は、正直に言ってそこまでありません。しかしそれは、裏を返せば「未発掘の魅力」「まだ知られていない面白さ」がたくさん眠っているということでもあります。
今作の企画当初は予想だにしていなかったことですが、とても不自由な「新しい生活様式」を求められる世の中になってしまいました。
このコロナ禍で思うように外出や遠出ができない昨今、まずは風雨来記シリーズで、みなさんも旅に出ませんか?
タイトル | 風雨来記4 |
ジャンル | 旅アドベンチャー |
発売日 | 2021年7月8日 |
対応機種 | PlayStation®4、 |
価格 | パッケージ版/ダウンロード版 |
CERO |