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そこへまた話をややこしくしそうな男が現れる。斑井は椿の苦りきった様子にもまるで意に介さず無駄に横柄な態度で近づいて来た。
「ま、納得の範囲かな。私のようなベテランと共演するのだから、それなりに実力のある女優を選んでもらわねば困ると思っていたのだが、君ならば……」
「やあ、御陵さんだっけ? 雨の中大変だったねえ」
謎の演説をぶち始めた斑井をあっさり素通りして、那須が顔を出す。無視された斑井は口をぱくぱくさせながら硬直していた。
「那須さん、ナイスや」
「貴重な戦力」
双子がこっそり那須に拍手を送る。
「あ、それ荷物? 運ぼうか。どれ、貸して」
那須は椿がようやく玄関の段差を引きずりあげたトランクをひょいと片手で持ち上げ、無造作に肩に担いだ。
「き、君ぃ! 人の話は最後まで聞くものじゃないかね!?」
ようやく金縛りから脱したらしい斑井が食って掛かろうとしたが、背後から暗石に襟首をつかまれる。
「最後まで聞く価値がどこにあったよ、今の話の」
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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