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御陵が引いていた大きなトランクを引き受けながら椿が言う。
「みささぎ――あら、そちらの名前で予約されていますの? いいのかしら、本名ではないのですけれど……」
御陵は困ったような顔をして首を傾げた。
だが、言われた椿の方はもっと困惑した表情で御陵を見返す。
「なんか斑井さんの上言ってるで」
「執事さんの反応、一番おもしろい…」
好き勝手なことを言って喜ぶ双子を苦々しい目で一瞥し、椿は開き直った口調で話し始めた。
「当家はホテルではございませんので、問題ありません。それに――」
「まあ、よかった。よろしくお願いしますわね、ええと…?」
「椿です」
「はい、椿さん。私は……あ、御陵でよろしいのでしたわね。それで、お部屋はどちらを使えばいいのかしら?」
「……ご案内します」
どうやら椿は、まともな説明をすることを諦めたらしい。それで納得出来るならもう勝手にしてくれ、とでも言いたげな顔だった。
「ほほう、御陵くんは君だったのかね。いや、なるほど」
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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