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一柳和は途方に暮れていた。
膝の上に三毛猫が乗っかっているせいである。
和はかなり猫好きだった。実家では今も三匹飼っているし、道ばたで野良猫を見かければつい立ち止まってしまうくらいに。
そういう類の人種にとっては膝の上に猫が居るという状況は至福に違いあるまい。
……ただし、真夏の屋外のベンチという環境でさえなければ。
「暑い……」
救いを求めるように周囲を見渡してみても人気はなかった。高速道路の中途半端な位置にある売店しかない小さなサービスエリア、
しかもまだ早朝とあっては人など数えるほどしか居るまい。車すらまばらにしか停まっていなかった。
交代で運転してやるから神戸まで乗せていけと強引に同乗して来た姉は、車を降りるなりお腹が空いたと売店に飛び込んで行ったままだ。
近くにいるのは、膝の上の毛玉とさっきまでベンチの周りをはね回っていた柴の雑種らしき犬が一匹だけだった。
和は犬も好きだった。思わず近寄って撫でてみて、近くのベンチに腰を下ろして残っていたウーロン茶を飲んでしまおうとしたところ、
どこからともなく現れた猫が当たり前のような顔をして膝に乗っかった。
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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