「続・和編」 “飼い主じゃない理由”Written by Yuki Nishinomiya
挿絵
「少年、あれいいのか?」
「はい?」
 男性の視線の先を追うと、さっきの犬がなにやらくわえていた。
「……わあっ!? 駄目、駄目だって! 返してー!!」
 道路地図とファックス用紙だった。転んだ拍子に落としてしまっていたらしい。
 慌てて犬に手を出す。犬はなんだ、くれないのかと言いたげに太い尻尾で一度ぱったりと地面を叩いてから紙束を返してくれた。 これ以外の荷物を持ってきてなくてよかったかもしれない、とほっとする。背後では、また男性が大笑いしている。
「よかったなぁ、少年。これ以上迷子になったら目も当てられんぞ」
「はい……え?」
 頷いてから、はっとして振り返る。
「ん? どうかしたか?」
「いえ、あの、なんで僕が迷子だってわかったんですか?」
 そんな話は一言もしていないはずなのだが。それどころか名前すら名乗っていない。
Illustrated by Koji Nishino ©2006 FOG / NIPPON ICHI SOFTWARE INC.
back
「和編」「日織編」「館編」「続・館編」「続・和編」
最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。