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ついには日織の返事を待つまでもなく、一人で会話し始める。ある意味この業界の権化のような人だな、と黙って聞きながら日織は感心した。
「つーわけで、そのロケ先のネタいただき! なワケよ! 『怪奇! 寂れた廃村をさまよう落ち武者の霊! カメラがとらえた怨念のすべてとは!?』
これどう? これどう? いいっしょ? イケるって絶対! うん、いただきだね! じゃ、出発来週だから」
「え、あの、来週ですかい?」
「うん? あれ、まさか埋まってる?」
「ええ……」
「マジで!? いつでもどこでも来てくれる出前迅速エブリディロープライスな日織ちゃんが埋まってるなんてそりゃまた珍しい! 珍事だね珍事!」
何気にかなり失礼な言われようだが、日織のスケジュールが大抵空いているのは事実なので仕方がない。
「なになに、何の仕事? 時代劇? まさかうちとかぶってたりしないよね? 『猟奇! 廃墟にたたずむ武士の怨霊!』みたいな」
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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