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鞄と一緒に降りようとしてつっかえてしまい、もう一度車内に引っ込んで出直す始末である。
間違いなく、こっちが自分の知っている女優だ、と思った。
あの、どことなく眠そうな顔つきにも覚えがある。
「……雨」
「だから降ってる言うたやないの」
今更のように天を仰いで呑気なことを言う姉の手を引こうとして、妹ははっと動きを止めた。いつの間にか近寄って来ていた姿に気付いたのだ。
「――お待ちしておりました」
かしこまった様子で双子に一礼する。
きょとんとした顔をして、“執事”の顔を見上げる妹。それに対し、姉は妙に楽しげに猫のような笑みを浮かべると、執事さん、と呟いた。
「はい。当家の執事で、椿と申します」
「え? まさか、もうカメラ回ってるん?」
妹の方が慌てたように辺りを見回す。
「違うと思う」
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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