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――妙なことになったもんだ。
いや、それとも当然の成り行きなのか。山奥の館、それを囲う雨雲、絵に描いたようなその光景に役者達まで物語の中に取り込まれ始めたということか。
少々困惑した様子で肩をすくめると、執事は小声で何事か言って大きめの荷物を引き受け足早に館へ向かった。双子もそれに続く。
「……鈴、待って」
「あー、もう! 持ったげるから、早ぅ……」
にぎやかな声が館の中へ消え、玄関の扉が閉ざされた。
それを見届けると“彼”は、そっと木立の影から顔をのぞかせほくそ笑む。
「――悪いなぁ。あんた達は本当に、山を降りられなくなるんだよ」
そしてまた、遠くから新たに車の音が近づいてくるのを聞いて、“彼”は薄暗さを増した木々の隙間に身を潜めた。
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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