|

|

|
赤い屋根も風見鶏も、やはりどこにも見えなかった。
ここから見当をつけるのはどうやら無理らしい。諦めて車に戻って住所を頼りに行ってみるしかなさそうだ。
和は小さくため息をつき、まだ未練を残したまなざしを眼下に広がる街に向けたまま柵から離れようとした。
「――うわっ!?」
もふ、とふくらはぎ辺りに妙な感触がぶつかり、悲鳴をあげて飛び退った……つもりだったが、足がもつれて思いっきり転ぶ。
「いったぁ……」
尻餅を着いた格好になり、何にぶつかったのかと見てみれば目の前に巨大な犬の顔があった。小学生くらいならまたがって乗れそうな大きさの犬は、何かご用ですか、
という風情で和の姿をしげしげながめている。
「………えーと……ご、ごめん」
とりあえずぶつかった事をわびてみる。犬は和の手のひらほどもありそうな舌を出して首を傾げた。
途端、すぐ近くで盛大に笑い転げる声が聞こえた。
|
|
|
最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
|
|