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「だって三郎よ? 名前からして犬っぽくない?」
「うちの黒猫にポチって名前着けたの姉ちゃんじゃないか」
「……そ、そうだけど」
口ごもった姉の表情がだんだんと臨戦態勢のそれになる。しまった、と和は思ったがもう遅かった。彼女はこうなるととことん納得するまでムキになる性格だった。
「でもさ、猫を捨てるのにわざわざ高速まで来る人って居る? 変じゃない?」
「犬でも変だよ」
「そうだけどー! だけど、えーっと……」
缶コーヒーを持っていない方の手を握り拳にして振り回しながら、姉は必死に反論の糸口を探す。
犬を見て猫を見て、周りを見回して、もう一度和の方を振り返ると、ぱっと顔を輝かせた。どうやら何事かに気が付いたらしい。
「そうだ! やっぱりこっちの子が三郎よ!」
と、ぽんぽんと犬の頭を撫で、勝ち誇った口調で高らかに宣言する。
「なんで?」
「ふっふっふ、和ってばうちでも飼ってるのに気付かないの?」
びし、と膝の上で丸くなっている猫を指さして姉は言い切った。
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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