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「だってその子、三毛猫じゃない!」
「……ああ」
何が言いたいのか察して、和は苦笑する。
「ああって何よ? 三毛よ三毛! 三毛猫の雄はものすっごく貴重なのよ?」
三毛猫の雄はとてつもなく珍しい。マニアには珍重され縁起を担ぐ人には拝まれると言うほどの希少種なのである。
ならばそもそもこんな所に捨てられるとは思えないし、何より雌猫に三郎はないだろう、というのが姉の主張であるらしい。
「知ってるよ。こいつも雌みたいだね」
「でしょー? 間違いないわね、三郎は……」
自信満々の姉の言葉を遮るように、売店の方からおばさんの声が水を差した。
「次郎ー、三郎ー、ごはんやでー」
その途端、大喜びで二匹は売店めがけて飛んでいった。和は膝の重圧が消えてほっとため息を吐く。
「………………」
わんわんとにぎやかに吠える犬とその後ろを転がるようについていく猫を、姉が呆然とした顔で見送っていた。
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最後のショートストーリー『目を覚ますまでは』が2/28発売の『ゲーマガ』4月号に掲載されています。
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